歯科衛生士実地指導料の算定要件と留意点~個別指導対策②~

個別指導の中で算定要件不足が指摘されることの多い項目の一つとして、歯科衛生士実地指導料が挙げられます。

歯科衛生士実地指導料の算定要件は厳しく、実地指導はしているが算定していない歯科医院もあります。
他方、歯科衛生士が実地指導しているにもかかわらず、算定要件が不足していることによって保険請求が認められないのは不本意なことといえます。

今回は、歯科衛生士実地指導料の算定要件と留意点について説明いたします。

1 歯科衛生士実地指導料とは?

歯科衛生士実地指導料には、「1」と「2」の2種類があり、それぞれの定義は以下のとおりとなります。

歯科衛生士実地指導料1

歯科疾患に罹患している患者であって、歯科衛生士による実地指導が必要なものに対して、主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、歯及び歯肉等口腔状況の説明及び次のイ又はロの必要な事項について15分以上実施した場合に算定する。なお、う蝕又は歯周病に罹患している患者については必ずイを実施するものであること。

イ プラークチャート等を用いたプラークの付着状況の指摘及び患者自身によるブラッシングを観察したうえでのプラーク除去方法の指導

ロ その他患者の状態に応じて必要な事項

 

歯科衛生士実地指導料2

歯科疾患に罹患している患者のうち、基本診療料に係る歯科診療特別対応加算を算定している患者であって、歯科衛生士による実地指導が必要なものに対して、主治の歯科医師の指示を受けた歯科衛生士が、歯及び歯肉等口腔状況の説明及び次のイ又はロの必要な事項について15分以上実施した場合又は15分以上の実地指導を行うことが困難な場合にあっては月2回の実地指導を合わせて15分以上行った場合に算定する。なお、う蝕又は歯周病に罹患している患者については必ずイを実施するものであること。

イ プラークチャート等を用いたプラークの付着状況の指摘及び患者自身によるブラッシングを観察したうえでのプラーク除去方法の指導

ロ その他患者の状態に応じて必要な事項

2 歯科衛生士実地指導料を算定する際の留意点

上記定義のとおり、歯科衛生士実地指導料を算定する際、歯科衛生士がブラッシングの指導をしたのみでは足りません。
そして、算定に際してはいくつか留意点があるので、以下で説明します。

2-1 診療録(カルテ)の記載

まず、歯科衛生士実地指導は主治の歯科医師が指示を行って実施した場合に算定することができます。
そのため、歯科衛生士に行った指示内容の要点を診療録に記載する必要があることに注意が必要です。

また、要点の記載も画一的なものでは足りず、患者の口腔状況に応じて適切に記載する必要があります。

さらに、患者に提供すべき文書の写しは診療録に添付しなければならず、後述のとおり、提供文書の記載にも注意すべき点が多くあります。

2-2 提供文書の記載

上記定義には記載されていませんが、歯科衛生士実地指導料は、当該実地指導に係る文章を3か月を超えない間に1回以上提供しなければ算定できません。

そして、提供すべき文書には、以下の事項を記載していないと、不十分であると指摘されてしまいます。

  1. ①指導等の内容
  2. ②口腔衛生状態(う蝕又は歯周病に罹患している患者はプラークの付着状況を含む。)
  3. ③指導の実施時刻(開始時刻と終了時刻)
  4. ④保険医療機関名、主治の歯科医師の氏名、指導を行った歯科衛生士の氏名

個別指導では、「提供文書の内容が画一的である」、「う蝕又は歯周病に罹患している患者に対して、プラークチャート等を用いたプラークの付着状況の指摘を実施していない」、「実地指導を15分以上実施していることが確認できない」等の指摘があるため、このような指摘を受けないよう、提供文書の記載内容の指導を徹底していただければと思います。

特に、実地指導は「15分以上」実施する必要がありますが、患者の予約簿からや歯科衛生士の出勤簿(シフト表)からすると、15分以上の時間をとれないような状況が窺われる場合には、15分以上実地指導を行ったか否かについて厳しく追及されることになりますので、注意してください。

3 まとめ

今回は、歯科衛生士実地指導料のうち、基本的な事項の算定要件と留意点について解説しました。
基本的な事項の算定要件だけでも、かなり注意すべき点があり、先生方によっては、点数に比して記載すべき文書に割く労力が合わないとし、算定されないという対応をとられることもあるかと思います。

もっとも、実際には患者さまのために適切な実地指導をしているにもかかわらず、点数として算定しないことは、非常にもったいないといえます。

算定要件を満たす文書を作成するように心がけ、保険請求上も問題のない治療を行っていただければと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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