歯科における初診・再診料の判断と留意点~個別指導対策③~
個別指導の中で指摘されることの多い項目の一つとして、初診料と再診料の判断誤りが挙げられます。
先生方も、日々の診療のなかで、初診か再診かの判断に迷われることがあるのではないでしょうか。
初診・再診の判断がつけば、そのような迷いがなくなり、患者さまの治療により集中できるといえます。
今回は、初診・再診料の判断と留意点について説明いたします。
目次
1 初診料が算定できる場合とは?
初診料は、以下のような場合に算定することを原則としています。
ポイントは、「特に初診料が算定できない旨の規定がある場合」や「歯科医学的に初診といわれる診療行為があった場合」がどのような場合を指すものなのかということになります。
以下では、上記に該当し、初診料を算定できない診療の代表的な例を説明します。
2 初診料を算定できない診療の例
以下のような場合には、原則として初診料を算定することができず、算定してしまった場合には返納の対象となりますので、注意が必要です。
- ・健康診断を目的とする患者の治療
- ・労災保険、健康診断、自費等により治療中の患者の治療
- ・診療継続中に他の傷病で初診を行った場合の治療
- ・任意に治療を中止した後、相当期間を経ずに同一の症状で来院した場合の治療
上記は原則であるため、以下で詳細な説明と例外について説明します。
2-1 健康診断を目的とする患者の治療
健康診断や定期診断を主訴として来院した患者さまについては、保険診療自体はできるものの、原則として、初診料を算定することはできません。
例外として、健康診断や定期診断で疾患が発見された場合について、疾患を発見した保険医以外の保険医(当該疾患を発見した保険医の属する保険医療機関の保険医を除きます)において治療を開始した場合には初診料を算定することができます。
2-2 労災保険、健康診断、自費等により治療中の患者の治療
労災保険、健康診断、自費等により治療中の患者さまの治療についても、初診料を算定することはできません。
なお、自費の治療をしている患者さまについて、当該治療とは関係しない部位の治療を保険診療で行う場合、初診料を算定できないとしても、再診料の扱いをどのようにすれば良いのかという問題はあります。
これについて、明確な見解が出ているわけではありませんが、再診料をとらないというわけにはいかないため、自由診療と別の日に診療するか、同日であっても自由診療と保険診療との間に少し時間を空けて、会計も別々にするというような対応が無難といえるでしょう。
2-3 診療継続中に他の傷病で初診を行った場合の治療
現に診療継続中の患者さまについて、新たに他の傷病が見つかり、初診を行った場合、その傷病について初診料を算定することはできないとされています。
そうすると、新たな傷病で初診料を算定するためには、診療継続中の傷病について治癒したという診断をし、その後他の傷病の初診をするということも考えられますが、初診料を算定したいがために診療継続中に発見しなかったのではないかと疑われることもあるため、他の傷病が診療継続中に歯科医学的に発見できないような傷病であったか否かという点についてはしっかりと検討する必要があります。
そして、上記のような疑いをもたれないためにも、患者さまの主訴が出た時期や傷病発見の状況等を診療録に記載しておく必要があるといえます。
また、一度初診料を算定した場合には、1月を経過した後でないと初診料を算定できませんので、別の傷病名で初診料を算定する際には、この点にも注意が必要です。
なお、この「1月」というのは、初診日から次の初診日(別の傷病)までの間に1月以上の間隔がなければいけないという意味になります。
2-4 任意に治療を中止した後、相当期間を経ずに同一の症状で来院した場合の治療
患者さまが任意に治療を中止した後、一定期間を経ずに同一の症状で来院した場合には、初診料を算定することはできません。
具体的には、以下のような期間となります。
- ①歯科疾患管理料または歯科疾患在宅療養管理料を算定した場合:管理計画に基づく一連の治療が終了した日から起算して2月以内は初診料を算定できない。
- ②①以外の場合:診療の中止から1月以内は初診料を算定できない。
また、上記①②の場合でも以下のような場合には初診と取り扱うことはできません。
- イ 欠損補填を前提とした抜歯で抜歯後印象採得まで1月以上経過した場合。
- ロ 歯周疾患等の慢性疾患である場合等であって、明らかに同一の疾病又は負傷に係る診療が継続していると推定される場合。
期間についてはかなり複雑な場合分けとなっているため、特に注意が必要といえます。
3 まとめ
今回は、初診料と再診料の判断誤りを少なくするため、初診料算定における注意点を中心に解説しました。
判断の誤りであったとしても、個別指導になった場合には指摘事項となりますので、今のうちから正しい知識に基づいて準備を進めてもらえればと思います。
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