医療広告規制の対象範囲は?~医療広告ガイドラインに関するQ&A①~

 先般、医療法改正に伴い新たな医療広告ガイドラインが公表されました。
 ガイドラインの内容については、【広告規制の対象・範囲はどこまで?~改正医療法における広告規制の解説①~】、【広告が禁止される内容は?~改正医療法における広告規制の解説②~】、【広告してもよい事項とは?~改正医療法における広告規制の解説③~】において解説していますが、今般、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」が公表され、具体的な禁止事例等が例示されるようになりました。
 歯科医院を運営する先生方にとって、ホームページを規制対象に含む医療広告規制は、関心のある事項といえますし、実際にご相談いただくことも増えています。
 そこで、今回から、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」のうち、歯科医師の先生方に有益な情報を抜粋して、複数回に分けて説明いたします。
 今回は、広告規制の対象・範囲に関するQ&Aについて紹介・説明します。以前に書いた医療法改正に伴うホームページの広告規制と留意点の記事の図で示すと、赤い矢印で示した部分に関する事項となります。

医療広告規制の対象範囲は?~医療広告ガイドラインに関するQ&A①~

1 広告規制の対象となる「広告」とは

 広告規制の対象・範囲はどこまで?~改正医療法における広告規制の解説①~でも述べましたが、医業の広告に関して規制されている広告(医療法第2章2節以下)とは、以下の要件を全て満たすものをいいます。

  1. ①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
  2. ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

2 広告該当性判断において注意しなければならない事項

 もっとも、具体的にどのようなものが上記要件を全て満たすのかについては、必ずしも明確とは言えません。以下では、「医療広告ガイドラインに関するQ&A」のうち、広告に該当するか否かを判断するうえで注意しなければならない事項を、具体例とともに紹介します。

2-1 新聞・雑誌の記事の引用

 新聞・雑誌記事は、患者の受診等を誘引する意図(誘因性)がないとして、広告には該当しないと説明されています。
 しかし、医療機関等の広告に、新聞や雑誌の記事等を引用する場合には、引用部分に記載された内容が、医療法及び医療広告ガイドラインに遵守した内容になっていなければなりません。
 例えば、新聞や雑誌に「日本が誇る歯科医院50選」という記事が掲載されており、それを自院のホームページにそのまま掲載したような場合には、その記事が歯科医院について評価した結果は、掲載されていない歯科医院よりも優れた旨を示す比較優良広告に該当することになるため、原則として広告できません。

2-2 記事風広告

 新聞・雑誌記事等に掲載された治療方法等に関する記事であっても、医療機関が広告料等の費用を負担する等の便宜を図って記事の掲載を依頼し、患者等を誘引するような場合は、いわゆる記事風広告として、広告に該当することとされています。
 具体例としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. ・「最新インプラント治療」といった書籍や冊子等の形態をとっていても、書籍等の内容が、特定の医療機関のみに可能な治療法や、治療法を行う一部の医療機関のみが紹介されている等、特定の医療機関への誘引性が認められる場合
  2. ・雑誌の同一紙面上の掲載物のうち、上段が治療法等に関する記事で、下段が当該治療等を実施している医療機関の紹介となっている場合で、医療機関が広告料等の費用を負担して記事の掲載を依頼している場合

2-3 広告規制の対象となる広告の具体例

 「医療広告ガイドラインに関するQ&A」では、広告規制の対象となる広告の具体例として、以下のものが挙げられています。

  1. ・広告のチラシ等に印刷されているQRコードを読み込むことで表示されるウェブサイト
  2. ・複数の医療機関を検索し、医療機関の情報を提供する機能を備えたようなスマートフォンのアプリケーションから得られる情報
  3. ・特定の人のみが閲覧可能な環境(exアクセスにパスワードを入力する必要がある等)に設定したウェブサイト
  4. ・患者様の希望により配布するメールマガジンやパンフレット
  5. ・フリーペーパーに掲載された医療機関の広告

 広告規制の対象となった場合には、原則として広告可能な事項のみ記載が許され、例外的に広告可能事項の限定解除の要件を満たした場合には広告可能事項以外の一定の事項について記載が許されます。広告可能事項の限定解除の要件については、広告してもよい事項とは?~改正医療法における広告規制の解説③~で説明していますので、参照してみてください。

2-4 広告規制の対象とならない広告の具体例

 上記とは反対に、広告規制の対象外となるものとして挙げられている具体例は以下のとおりです。

  1. ・医療機関の広告として医療法人の附帯業務について掲載するものではなく、当該附帯業務を専ら行うための施設単独の広告
  2. ・医療機関の敷地内において、医療に関係がなく、当該医療機関と関連性のないものとして区分され、患者様の受診を誘引する意図が認められない事項についての掲示
  3. ・医療機関主催の患者様や地域住民向け講演会についての広告
  4. ・フェイスブックやツイッターといった個人のSNSで医療機関の治療等の内容又は効果に関する内容を述べるもの(ただし、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼している場合を除く)

 なお、上記は、医療法における広告規制の対象外ですが、実質的に上記1記載の広告の要件に該当する場合には広告規制の対象となりますし、他の法令の規制を受ける可能性はありますので、その点に注意が必要です。

3 まとめ

 「医療広告ガイドラインに関するQ&A」が公表されたことにより、難解な枠組みとなっていた医療広告規制において、何をしてはならないのかが一定程度明確化されたといえます。
 医療広告ガイドラインを遵守し、健全な医院経営を目指してください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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