歯科医院の保有する個人情報が漏洩してしまった場合の対応は?
個人情報をデータとして管理するようになっている現在、個人情報の漏えいが世間を騒がせることも少なくありません。
歯科医院は、患者さまの情報をはじめとする個人情報を多く保有しています。
歯科医院を運営する先生方は、その管理を徹底されているとは思いますが、個人情報を保有している以上、情報漏えいの可能性をゼロにすることはできません。
では、万が一、個人情報が漏えいしてしまった場合、どのような対応をすべきでしょうか。
今回は、歯科医院の保有する個人情報が漏えいしてしまった場合の対応について説明いたします。
1 個人情報とは?
個人情報保護法第2条では、保護されるべき個人情報を、生存する個人の情報にあって、「氏名・生年月日その他の記述等によって特定の個人を識別する情報」及び「個人識別符号が含まれるもの」と定義しています。
「個人識別符号」は、個人に割り当てられた個人を特定することのできる番号であり、健康保険証番号や免許証番号等がこれにあたります。
歯科医院内で個人情報が記載されているものとしては、主に、以下のものが挙げられます。
- 診療録
- 処方せん
- 照射録
- 手術記録
- 検査所見記録
- エックス線写真
- 歯科衛生士業務記録
- 歯科技工指示書
- 調剤録
これらは、紙媒体であっても、パソコンやUSB等の電子媒体に保存されているものであっても、個人情報に該当しますので、厳重な保管が求められます。
個人情報が漏えいしてしまった場合に生じる可能性のある法的責任と事前の漏えい対策については、以前に書いた個人情報漏洩~歯科医院トラブル事例と対策の記事を参照してみてください。
2 個人情報の漏えいが発覚した場合の対応は?
個人情報の漏えいが発覚した場合の対応については、「個人データの漏えい等の事案が発生した場合等の対応について」(平成29年個人情報保護委員会告示第1号)において説明がされています。
以下では、上記内容を分かりやすく説明します。
2―1 漏えいが発覚した場合に歯科医院内で行うべき対応
漏えいが発覚した場合に行うべき対応は、以下のとおりです。
- ①事業内部における報告及び被害の拡大防止
- ②事実関係の調査及び原因の究明
- ③影響範囲の特定
- ④再発防止策の検討及び実施
- ⑤影響を受ける可能性のある本人への連絡等
- ⑥事実関係及び再発防止策等の公表
この①~⑥までの対応を迅速に行うことが、二次被害を防ぎ、歯科医院の損害を拡大させないために重要といえます。
2―2 個人情報保護委員会等への報告
個人情報の漏えいが発覚した場合には、速やかに、個人情報保護委員会への報告する必要があります。
病院において、認定個人情報保護団体に加入している場合には、個人情報保護委員会ではなく、認定個人情報保護団体に報告します。
報告は、FAXでも行うことができますので、できるかぎり速やかに報告をしてください。
なお、個人情報保護委員会への報告を要しない場合として、以下が挙げられています。
- ①実質的に個人データ又は加工方法等情報が外部に漏えいしていないと判断される場合
- ②FAXも若しくはメールの誤送信、又は荷物の誤配等のうち軽微なものの場合
②のうち、軽微なものとは、「宛名及び送信者名以外に個人データ又は加工方法等情報が含まれていない場合」をいうとされています。
上記からすると、メールを誤送信してしまった場合には、送信先におわびをしたうえで、個人情報の削除を依頼すれば足りるということになります。
もっとも、個人情報保護委員会等への報告を要しない場合であっても、歯科医院内で原因調査及び再発防止策を実施することが望ましいとされていますので、誤送信をしてしまった場合でも、責任者に報告し、再発防止策を実施する体制にしておくべきといえるでしょう。
3 個人情報漏洩保険について
個人情報が漏えいしてしまった場合、その対応には費用及び時間を要します。
歯科医院において、個人情報漏洩保険(または情報漏洩特約)に加入されていれば、その費用の全部または一部を保険で賄うことができます。
補償内容は保険会社によって多少異なりますので、まずはご加入している保険の担当者に尋ねていただくのが良いかと思います。
4 まとめ
歯科医院は、患者さまの病歴等、個人情報のなかでもセンシティブなものを取り扱う以上、先生方としては、その管理はもちろんのこと、万が一漏えいが生じてしまったときの対応も知っておかなければいけません。
自院の個人情報管理体制や万が一漏えいが生じてしまった際の対応等を整備し、不測の事態に備えていただければと思います。
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