ホワイトニングでクーリングオフを主張された場合の対応

平成29年12月1日より、ホワイトニングの一部が、特定商取引法上の「特定継続的役務」に加わり、クーリングオフの適用対象となりました。

これまでクーリングオフに縁遠かった歯科医院が、患者さまからクーリングオフを主張された場合、歯科医院を運営する先生方としては、どのように対応すれば良いのか迷われるのではないでしょうか。

今回は、患者さまからクーリングオフを主張された場合、歯科医院としてとるべき対応について説明いたします。

1 クーリングオフとは?

クーリングオフ制度とは、権利行使期間として定められた期間内であれば、消費者は、事業者との間で締結した契約について、書面によって、無条件・無理由で契約の解除をすることができる制度です(特定商取引法第48条等)。

2 クーリングオフの対象となるホワイトニングの範囲

クーリングオフの対象となるホワイトニング(歯牙の漂白)は、その全てが対象となるわけではありません。

クーリングオフの対象となるホワイトニングは、「歯牙の漂白剤の塗布による方法」です。
例えば、ホワイトニングジェルを注入したマウストレーを装着させることによるものなどが該当します。

また、ホワイトニングを行う期間や料金によっても限定が加えられています。
ホワイトニングの施術の始期から終期までが1か月を超えるもので、患者さまが支払う金銭が5万円を超えるものがクーリングオフの対象となります。

ホワイトニングを行う場合、ホワイトニングのために購入するものも「関連商品」としてクーリングオフの対象となります。
ホワイトニングのために用いられるマウスピースや、定期的に歯に塗布するホワイトニングジェル(歯牙の漂白剤)が「関連商品」に該当します。

  1. クーリングオフの対象は「歯牙の漂白剤の塗布による方法」で、施術の期間が1か月を超え、総額が5万円となるもの
  2. ホワイトニングに用いられるマウスピースや歯牙の漂白剤などの「関連商品」もクーリングオフの対象となる

3 書面交付義務

ホワイトニングがクーリングオフの対象となる範囲に該当する場合、歯科医院は、契約を締結するまでに、その概要を記載した書面(概要書面)を交付しなければなりません。

また、契約を締結したときは、契約内容を明らかにする書面(契約書面)を交付しなければなりません。
それぞれの書面の記載事項については、以下のとおりです。

  1. 概要書面の記載事項
  2. ①歯科医院の名称及び運営する先生の名前・歯科医院の住所及び電話番号(医療法人の場合には代表者の氏名も)
  3. ②提供されるホワイトニングの内容
  4. ③関連商品がある場合にはその商品名、種類及び数量
  5. ④患者さまが支払わなければならない金銭の概算額
  6. ⑤金銭の支払時期及び方法
  7. ⑥ホワイトニング施術の期間
  8. ⑦クーリングオフに関する事項
  9. ⑧中途解約に関する事項
  10. ⑨割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  11. ⑩前払取引を行うときは前払金についての保全措置を講じているか否か及び講じている場合にはその内容
  12. ⑪特約があるときはその内容
  13. ※書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し、日本工業規格Z8308に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければならない。
  1. 契約書面の記載事項
  2. ①歯科医院の名称及び運営する先生の名前・歯科医院の住所及び電話番号(医療法人の場合には代表者の氏名も)
  3. ②契約の締結を担当した者の氏名
  4. ③関連商品を販売する者の氏名または名称、住所及び電話番号(法人の場合は代表者の氏名も)
  5. ④提供されるホワイトニングの内容(ホワイトニングの種類、方法、施術にかかる時間数・回数その他の数量の総計、施術を行うものの資格等)
  6. ⑤関連商品がある場合にはその商品名、種類及び数量
  7. ⑥患者さまが支払わなければならない金銭の額
  8. ⑦金銭の支払時期及び方法
  9. ⑧ホワイトニング施術の期間
  10. ⑨契約の締結年月日
  11. ⑩クーリングオフに関する事項
  12. ⑪中途解約に関する事項
  13. ⑫割賦販売法に基づく抗弁権の接続に関する事項
  14. ⑬前払取引を行うときは前払金についての保全措置を講じているか否か及び講じている場合にはその内容
  15. ⑭特約があるときはその内容
  16. ※クーリングオフに関する事項等を赤枠の中に赤字で記載しなければならない
  17. ※書面の内容を十分に読むべき旨を赤枠の中に赤字で記載し、日本工業規格Z8308に規定する8ポイント以上の大きさの文字及び数字を用いなければならない。

これらの書面は、記載内容が多いので、概要を患者さまに説明する必要があります。
また、交付したか否かで問題になることが多いので、書面を交付した場合には、書面の内容について説明を受けたこと及び書面を受領したことを患者さまにサインしてもらうべきです。

これらの書面を交付していない場合や、記載事項の不備や虚偽の記載がる場合には、4で述べるクーリングオフの権利行使期間が進行しないほか、行政処分(ホワイトニング業務の停止命令等)や刑事罰(6月以下の懲役、100万円以下の罰金)の対象となりますので、注意してください。

4 クーリングオフが行われる時期

クーリングオフを行使することができる期間は、契約書面を受領した日から8日間以内となります。

書面を交付していない場合には期間の制限なくクーリングオフを主張できることになるので、この点には注意が必要です。

また、書面を交付している場合でも、中途解約は8日間を超えても可能ですので、この点は注意してください。

5 クーリングオフの効果

クーリングオフが行われた場合、行っていない施術をする必要はなくなりますが、既に支払済みの代金については、患者さまに返還しなければなりません。

この場合、契約書面に記載があったとしても、解除に伴う損害賠償や違約金の支払を請求することはできませんので、注意してください。

6 クーリングオフが主張された場合の対応

以上のクーリングオフ制度を前提として、患者さまからクーリングオフが主張された場合に、歯科医院としてはとるべき対応は以下のとおりです。

○図○

7 まとめ

今回は、ホワイトニング施術に対するクーリングオフの主張がなされた場合にとるべき対応について説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
クーリングオフに対して、正しい理解のもと、適切に対応してもらえればと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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