患者様への説明と同意①~保険診療の場合~

 先生方から、診療内容の説明に関して患者様とトラブルになったというご相談を多く受けます。その際に問題となってくるのが患者様への説明の程度と同意の有無です。
 どの程度説明をする必要があるのか、どのように同意をしてもらえれば良いのか等、疑問に思われている先生方も多いのではないかと思います。
 そこで、保険診療における患者様への説明と同意について説明いたします。
 なお、今回は、保険診療における患者様への説明と同意を主に説明しており、自由診療については患者様への説明と同意②~自由診療の場合~を参照して下さい。

1 インフォームド・コンセントとは

 診療内容に関する医師の説明に基づき、患者様が同意することをインフォームド・コンセントと呼んでいます。この説明には、患者様の疑問に対する受け答えも含まれます。

2 患者様への説明の程度

 では、患者様への説明の程度として、具体的にどのような事項をどの程度説明することが求められるのでしょうか。以下で説明いたします。

2-1 診療情報の提供等に関する指針

 日本におけるインフォームド・コンセントの具体的指針を示すものとして、厚生労働省より、「診療情報の提供等に関する指針」(平15.9.12医政発0912001)が出されています。
 同指針によりますと、医療従事者は、原則として、以下の事項について丁寧に説明しなければならないとされています。なお、これらの説明は、患者様が未成年者等で判断能力がない場合には、親権者等に対して行う必要があります(判断能力のある未成年者には、未成年者とその親権者の双方に説明することが望ましいです)。

  1. ①現在の症状及び診断病名
  2. ②予後
  3. ③処置及び治療の方針
  4. ④処方する薬剤について、薬剤名、服用方法、効能及び特に注意を要する副作用
  5. ⑤代替的治療法がある場合には、その内容及び利害得失(患者が負担すべき費用が大きく異なる場合には、それぞれの場合の費用を含む。)
  6. ⑥手術や侵襲的な検査を行う場合には、その概要(執刀者及び助手の氏名を含む。)、危険性、実施しない場合の危険性及び合併症の有無
  7. ⑦治療目的以外に、臨床試験や研究などの他の目的も有する場合には、その旨及び目的の内容

2-2 説明の程度

 先生方としては、最低限上記に掲げられた事項を患者様に丁寧に説明する必要があります。
 このなかでも、問題となることが多いのは、処置及び治療の方針の説明が足りない、代替的治療法の説明を受けていない、というものです。代替的治療法については、通常の医療水準に基づき、合理的に考えられる範囲の代替的治療法を説明する必要があるといえます。
 説明の程度としては、簡単な治療方法であれば、口頭で説明することでも問題ありませんが、口頭のみの説明では理解しにくい治療方法の場合には、模型や書面を用いる等の方法で、患者様に分かるように丁寧に説明する必要があるといえます。

3 説明内容及び同意の記録化

 インフォームド・コンセントは、「説明」と「同意」ですので、上記のとおりに説明したこと及び同説明に対して同意を得たことは、少なくともカルテに記載しておくべきです。
 カルテに記載がないと、後に紛争に発展したときに、治療内容を説明したことを示す証拠がない状態となり、歯科医院側に不利に働くおそれがあります。カルテに説明内容を詳細に記載するのは面倒な作業ですが、後の紛争を予防するため、上記の事項を説明したことは記載すべきといえます。少なくとも、説明した事項のキーワードを箇条書きで記載しておく程度のことは行うべきでしょう。
 同意書については、記載してもらうことが望ましいのは間違いありませんが、全ての診療に同意書の署名を求めるわけにもいかないと思いますので、治療内容によって扱いを変えるという方法が現実的なのではないかと思います。

4 説明・同意が適切になされなかった場合のリスク

 患者様への説明・同意が適切になされなかった場合、意に沿わない治療をされたとして患者様から治療費の返還や損害賠償請求がなされる可能性があります。
 治療目的に沿わない治療が行われた場合、治療費を返還しなければなりませんし、たとえ治療目的に沿っていたとしても、説明義務違反を理由として慰謝料等の損害賠償請求がなされる可能性があります。
 このような請求がなされるだけでも歯科医院にとってはリスクですので、患者様への説明とそれに対する同意はしっかりと取り付ける必要があります。

5 まとめ

 今回のまとめとしては、以下のとおりとなります。

  1. ・「診療情報の提供等に関する指針」に則った説明をすべき
  2. ・患者様への説明方法は、口頭でも問題ないが、患者様が理解できる方法ですべき
  3. ・患者様に説明した事項は、少なくともカルテに記載しておくべき

 治療行為は説明と同意によって正当化されます。トラブルを未然に防止するためにも、患者様に対して治療方法を丁寧に説明し、理解してもらったうえで同意をいただき、治療を行ってください。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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