広告してもよい事項とは?~改正医療法における広告規制の解説③~

 前回から、改正医療法における広告規制について理解してもらえるよう、複数回に分けて説明しています。
 今回で最後となりますが、今回は広告可能事項について説明いたします。以前に書いた医療法改正に伴うホームページの広告規制と留意点の記事の図で示すと、赤い矢印で示した部分の説明になります。

改正医療法における広告規制の解説③~広告可能事項~

1 広告可能事項の全体像

 医療法では、広告してはならない事項(広告禁止事項)のみならず、広告可能な事項についても定められています(医療法第6条の5第3項)。
 もっとも、同条項は、「厚生労働省令で定める場合」を除き、同条項に掲げる事項以外の広告をしてはならないと規定しており、厚生労働省令に定める場合には例外として広告可能であるとしています。
 つまり、広告に該当した場合には、原則として広告可能事項として規定されたものしか記載してはならず(広告可能事項の限定)、例外として、厚生労働省令に定める場合には広告可能事項の限定を解除するという構造になっています。
 以下では、まず原則である限定的な広告可能事項について説明した後、広告可能事項の限定解除の要件について説明いたします。

2 原則-限定された広告可能事項

 広告可能な範囲は以下のとおりです(医療法6条の5第3項)。

  1. ①歯科医師である旨
  2. ②診療科名
  3. ③病院又は診療所の名称、電話番号及び所在の場所を表示する事項並びに病院又は診療所の管理者の氏名
  4. ④診療日若しくは診療時間又は予約による診療の実施の有無
  5. ⑤法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた病院若しくは診療所又は歯科医師である場合には、その旨
  6. ⑥地域医療連携推進法人の参加病院等である場合には、その旨
  7. ⑦入院設備の有無、医療法7条2項に規定する病床の種別ごとの数、歯科医師その他の従業者の員数その他の当該病院又は診療所における施設、設備又は従業者に関する事項
  8. ⑧当該病院又は診療所において診療に従事する医療従事者の氏名、年齢、性別、役職、略歴その他の当該医療従事者に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるもの
  9. ⑨患者又はその家族からの医療に関する相談に応ずるための措置、医療の安全を確保するための措置、個人情報の適正な取扱いを確保するための措置その他の当該病院又は診療所の管理又は運営に関する事項
  10. ⑩紹介をすることができる他の病院若しくは診療所又はその他の保険医療サービス若しくは福祉サービスを提供する者の名称、これらの者と当該病院又は診療所との間における施設、設備又は器具の共同利用の状況その他の当該病院又は診療所と保健医療サービス又は福祉サービスを提供する者との連携に関する事項
  11. ⑪診療録その他の診療に関する諸記録に係る情報の提供、医療法6条の4第3項に規定する書面の交付その他の当該病院又は診療所における医療に関する情報の提供に関する事項
  12. ⑫当該病院又は診療所において提供される医療の内容に関する事項(検査、手術その他の治療の方法については、医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めるものに限る)
  13. ⑬当該病院又は診療所における患者の平均的な入院日数、平均的な外来患者又は入院患者の数その他の医療の提供の結果に関する事項であって医療を受ける者による医療に関する適切な選択に資するものとして厚生労働大臣が定めた事項
  14. ⑭その他前各号に掲げる事項に準ずるものとして厚生労働大臣が定める事項

 以下で個々の広告可能事項の留意点について解説します。

2-1 ①歯科医師である旨

 歯科医師である旨は当然に広告可能事項となります。
 もっとも、歯科医師は歯科医師法に基づく歯科医師である必要があり、外国における歯科医師である旨は広告できません。

2-2 ②診療科名

 診療科名については、以下の診療科名が広告可能であるとされています。

  1. ・歯科
  2. ・小児歯科
  3. ・矯正歯科
  4. ・歯科口腔外科

 上記を組み合わせた診療科(ex小児矯正歯科)は可能ですが、法令に根拠のない名称(exインプラント科、審美歯科)は広告できませんので、注意してください。

2-3 ③病院又は診療所の名称等

 名称については、正式な名称だけでなく、当該医療機関であることが認識可能な略称や英語名についても広告可能です。
 また、病院又は診療所のマークや名称が記載された看板の写真についても広告可能とされています。

2-4 ④診療日、診療時間等

 診療日や診療時間、予約受付の時間については、患者様に提供するべき情報であるため、できる限り広告に記載することが望ましいとされています。

2-5 ⑤指定を受けた病院又は診療所等である旨

 法令の規定に基づき一定の医療を担うものとして指定を受けた旨や法令における名称、それらの略称(ex 保険医療機関である旨、労災保険指定病院である旨)については広告可能であり、虚偽広告や治療効果等の広告禁止事項とならない限り、指定を受けた制度に関して説明することも問題ありません。

2-6 ⑥地域医療連携推進法人の参加病院等である旨

 参加する地域医療連携推進法人名や、当該法人に参加する病院等の数や名称について広告可能とされています。

2-7 ⑦入院設備の有無等

 病院又は診療所の構造設備、人員配置に関する事項(ex 施設の概要、障害者等に関する構造上の配慮、据え置き型の医療機器等の機械器具の配置状況、従業者の人数)は広告可能とされています。

2-8 ⑧歯科医師、医療従事者の氏名、略歴等

 医療従事者の範囲は、法律により厚生労働大臣又は都道府県知事の免許を受けた者に限ります。
 また、非常勤の歯科医師、医療従事者については、常勤であるかのような誤認を与える広告は誇大広告となるため、非常勤である旨や勤務する日時を記載する必要があります。
 さらに、広告告示(平成19年厚生労働省告示第108号)に掲げる基準を満たした団体が厚生労働大臣に届出を行った場合は、当該団体から認定を受けた旨(ex 〇〇学会認定〇〇専門医)を広告しても差し支えないとされています。その際、専門性の認定を行った団体を明記することとされています。

2-9 ⑨病院又は診療所の管理又は運営に関する事項

 休日・夜間における診療実施の有無、セカンドオピニオンの実施の有無、平均待ち時間、個人情報の取扱い等、病院又は診療所の管理又は運営に関する事項は、客観性・正確性を確保し得る事項であれば、広告可能とされています。

2-10 ⑩紹介可能な他の病院又は診療所の名称等

 紹介することができる他の病院又は診療所の名称、共同利用可能な医療機器等に関する事項は広告可能とされています。
 ただし、医療機器については、医薬品医療機器等法の広告規制の趣旨に鑑み、承認又は認証を得た医療機器に限定するとともに、同法上の承認又は認証の範囲を逸脱する使用法や診断率、治癒率等の治療の効果に関する事項は広告してはならないとされています。
 また、紹介率や逆紹介率についても広告可能ですが、広告する場合には算定式と算定に使用した患者数等について、住民に周知できるように公表することがお必要となります。

2-11 ⑪診療情報の提供に関する事項

 診療録等の開示の手続に関する事項や相談窓口の連絡先等について広告可能とされています。

2-12 ⑫検査、手術その他の治療の方法に関する事項

 基本的には保険診療における検査、手術その他の治療方法に関する事項が広告可能となっており、治療の方針についても、治癒率等の治療効果を説明することなく、広告可能事項の範囲であれば、記載しても差し支えないとされています。
 また、自由診療についても、美容等の目的であるために自由診療とされているものの、歯列矯正等、その手技等は保険診療と同一ということであれば、検査、手術その他治療の方法について広告可能であるとされています。

2-13 ⑬患者数等

 在宅患者、外来患者の数等については、広告された内容の成否が容易に検証できるよう、広告された患者数について、ウェブサイト、年報等広く住民に周知できる方法により公表されていれば広告可能とされています。

2-14 ⑭その他厚生労働大臣が定める事項

 費用の支払方法、健康診断の実施の有無、対応言語、駐車設備に関する事項等、広告告示第4条に掲げる事項については広告可能とされています。

3 例外-広告可能事項の限定解除

 省令(医療法施行規則第1条の9の2)では、以下の①~④のいずれも満たした場合に広告可能であるとされています。なお、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限ります。

  1. ①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. ②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. ③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. ④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 特に④に関しては、リスク、副作用に関する事項の掲載場所につき、患者様にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページに掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載してはならないとされていますので、注意が必要です。

4 まとめ

 上記のとおり、広告可能事項は限定されており、歯科医院側としては、広告の内容につき慎重に判断することが求められます。
 広告規制は難解なものとなっていますが、規制に違反すると罰則の対象にもなってしまうため、しっかりと理解し、健全な医院運営を目指しましょう。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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