広告が禁止される内容は?~改正医療法における広告規制の解説②~
前回から、改正医療法における広告規制について理解してもらえるよう、複数回に分けて説明しています。
今回は、広告禁止事項について説明いたします。以前に書いた医療法改正に伴うホームページの広告規制と留意点の記事の図で示すと、赤い矢印で示した部分の説明になります。
目次
1 広告禁止事項の全体像
医療法第6条の5第1項では、内容が虚偽にわたる広告を禁止し、同2項では、広告の内容が一定の基準に適合するものでなければならないとされています。
また、「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関して広告し得る事項及び広告適正化のための指導等に関する指針(医療広告ガイドライン)」では、品位を損ねる広告やその他の法令で禁止される内容の広告を慎むべきことを記載しています。
これらをまとめると、以下の事項が広告禁止事項となります。
- ①内容が虚偽にわたる広告(虚偽広告)
- ②他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告(比較優良広告)
- ③誇大な広告(誇大広告)
- ④公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告(公序良俗に反する内容の広告)
- ⑤患者その他の者(以下「患者等」という)の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
- ⑥治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
- ⑦品位を損ねる内容の広告
- ⑧その他の法令等で禁止される内容の広告
また、上記禁止事項が医療法上の罰則等の対象になるものなのかどうかという観点からは、以下のとおり整理することができます。
2 広告禁止事項各論
上記広告禁止事項につき、以下で個別具体的に説明します。
2-1 虚偽広告
広告ガイドラインにおいて、以下のような広告は、虚偽広告として扱うとされています。
- ・絶対安全な手術です
- ・どんなに難しい症例でも必ず成功します
- ・厚生労働省の認可した〇〇専門医
- ・加工・修正した術前術後の写真の掲載
- ・一日で全ての治療が終了します(実際は定期後の処置等が必要な場合)
- ・〇%の満足度(根拠・調査方法の提示がないもの)
- ・当院は、〇〇研究所を併設しています(研究の実態がないもの)
内容が虚偽のものはもちろんのこと、データの根拠や調査方法を明確にせず、データの結果と考えられるもののみを表示しているものや、対象を限定した「公正なデータ」と呼べないものに基づく表示は虚偽広告として取り扱うものとされていることに注意が必要です。
2-2 比較優良広告
「他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告」とは、特定又は不特定の他の医療機関(複数の場合を含みます)と自らを比較の対象とし、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、自らの病院等が他の医療機関よりも優良であることを広告することを意味します。
広告ガイドラインにおいて、以下のような広告は比較優良広告として取り扱うとされています。
- ・当院は県内一の医師数を誇ります
- ・どんなに難しい症例でも必ず成功します
- ・本グループは全国に展開し、最高の医療を広く国民に提供しております
- ・芸能プロダクションとも提携しています
- ・著名人も〇〇医師を推薦しています
- ・著名人も当院で治療を受けています
このほかにも、例えば、「日本一」、「No1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、比較優良広告として禁止される表現に該当します。
また、病院等のウェブサイトやメールアドレスがno1hospi@xxx.or.jp(No.1hositalを連想させる)となっているものについても、比較優良広告に該当するとされています。
さらに、客観的な事実を表示して優良であることを示すことは禁止されませんが、当該事実に裏付けがあることが必要であり、調査結果等を引用する場合には、出典、調査の実施主体、調査の範囲、実施時期等を併記する必要があるとされています。
2-3 誇大広告
「誇大な広告」とは、必ずしも虚偽ではないが、施設の規模、人員配置、提供する医療の内容等について、事実を不当に誇張して表現していたり、人を誤認させる広告を意味します。
「人を誤認させる」とは、一般人が広告内容から認識する印象や期待感と実際の内容に相違があることを常識的判断として言えれば足り、実際に誤認したという結果までは必要としないとされています。
広告ガイドラインにおいて、以下のような広告は誇大広告として取り扱うとされています。
- ・医師数〇名(〇年〇月現在)
→その後の状況の変化により、医師数が大きく減少した場合には誇大広告として扱うこととされています - ・〇〇学会認定医、〇〇協会認定施設(活動の実態のない団体による認定)
- ・手術や処置等の効果又は有効性を強調するもの(ex「 〇〇手術は効果が高く、おすすめです」、「〇〇手術は効果が乏しく、リスクも高いので、新たに開発された〇〇手術をおすすめします」)
- ・比較対象が不明であるもの(ex 「〇〇手術は比較的安全な手術です」)
- ・伝聞や科学的根拠に乏しいもの(ex 「〇〇の症状のある二人に一人が〇〇のリスクがあります」、「こんな症状が出ていれば命にかかわりますので、今すぐ受診ください」)
- ・病人が回復して元気になる姿のイラスト
2-4 公序良俗に反する内容の広告
「公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告」とは、わいせつ若しくは残虐な図画や映像又は差別を助長する表現等を使用した広告など、公序良俗に反する内容の広告を意味します。
2-5 患者等の主観に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談
「患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談」とは、医療機関が、患者自身の体験や家族等からの伝聞に基づく主観的な体験談を、当該医療機関への誘引を目的として紹介することを意味します。
「治療の内容又は効果に関する」体験談に限定されているため、その他の体験談(ex スタッフへの御礼の言葉)であれば禁止されません。
なお、改正医療法における広告規制の解説①~広告規制の対象・範囲でも説明しているとおり、個人が運営するウェブサイト、SNSの個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどの事情がない場合には、広告に該当しませんので、禁止ではありません。
2-6 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等
「治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告」とは、いわゆるビフォーアフター写真を意味します。
「患者等を誤認させるおそれがある」と限定されているため、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合については禁止されません。もっとも、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮する必要があり、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式は禁止されています。
2-7 品位を損ねる内容の広告
広告ガイドラインによれば、以下のような広告は品位を損ねる、あるいはそのおそれがあるとされています。
- ①費用を強調した広告
・今なら〇円でキャンペーン実施中
・期間限定で〇〇療法を50パーセントオフで提供しています
・〇〇100,000円50,000円
・〇〇治療し放題プラン - ②提供される医療の内容とは直接関係ない事項による誘引
・無料相談された方全員に〇〇をプレゼント - ③ふざけたもの、ドタバタ的な表現による広告
2-8 その他の法令等で禁止される内容の広告
広告ガイドラインによれば、他の法令に抵触する広告を行わないことは当然として、他の法令に関する広告ガイドラインも遵守することとされています。
また、医薬品や医療機器の販売会社等から金銭の授与等の便宜を受けて特定の疾病を治療できる旨等について広告することについても、厳に慎むべきであるとされています。
他法令の例としては、以下のような法律が挙げられます。
- ①医薬品医療機器等法
「医薬品『〇〇』を処方できます」のような医薬品の商品名を特定して表示する広告は禁止されます。 - ②健康増進法
- ③景表法
- ④不正競争防止法
3 まとめ
上記のとおり、広告禁止事項は多岐にわたっているため、歯科医院側としては、広告の内容につき慎重に判断することが求められます。
また、体験談やビフォーアフター写真についてはホームページに載せている歯科医院も少なくないと思いますので、しっかりと対策をすることが必要です。
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