医療法改正に伴うホームページの広告規制と留意点~平成30年1月24日開催の検討会に基づいて~

 医療法では、歯科医業に関わる広告を規制していますが、従前、ホームページについては広告に該当しないという扱いを受けており、同法による広告規制の対象外となっていました。
 しかし、平成29年の医療法改正(平成29年法57)により、ホームページを含むウェブサイトも広告規制の対象になるとされました。
 詳細や新しいガイドラインについては現在検討がなされていますが、ホームページを開設している歯科医院は多く、改正によってどのような規制を受けるのかという点は先生方にとっても関心が高いのではないかと思います。
 そこで、今回は、現在検討されている最新の議論に基づいたホームページの広告規制とその留意点について説明いたします。
 なお、以下の説明は、現時点において公表されている平成30年1月24日開催の「第8回医療情報の提供内容等のあり方に関する検討会」に基づくものであり、確定の情報ではないことを予めお伝えしておきます。

1 広告の定義

 医療法に定める広告とは、以下の要件を全て満たすものをいい、この要件に該当すれば、ホームページであっても広告に該当し、以下の2ないし4で説明する広告規制を受けることになります。

  1. ①患者の受診等を誘引する意図があること(誘因性)
  2. ②医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院若しくは診療所の名称が特定可能であること(特定性)

2 医療法における広告規制の概要

 医療法第6条の5第1項では、内容が虚偽にわたる広告を禁止し、同2項では、広告の内容が一定の基準に適合するものでなければならないとされています。
 また、同3項では、広告可能な事項を限定しています。さらに、4で述べますが、ホームページ等においては、限定的に広告可能事項とする定めも設けられています。
 このように、医療法における広告規制は、広告禁止事項を定めるとともに、広告可能事項を定めているという特徴を有しているといえます。
 以下では、広告禁止事項を説明したのち、広告可能事項(特に、ホームページ等における限定的な広告可能事項)について説明します。

3 広告禁止事項

 医療法第6条の5第2項では、広告の内容が以下の基準に適合するものでなければならないとされています。

  1. ①他の病院又は診療所と比較して優良である旨の広告をしないこと(比較優良広告の禁止)
  2. ②誇大な広告をしないこと(誇大広告の禁止)
  3. ③公の秩序又は善良の風俗に反する内容の広告をしないこと(公序良俗に反する広告の禁止)
  4. ④その他医療に関する選択に関し必要な基準として厚生労働省令で定める基準

 ④の厚生労働省令について、現在検討会で協議がなされており、現時点では次に説明するとおりの省令案が提示されています。

3-1 省令案における広告禁止事項の内容

 現在協議されている検討会において、上記④に関し、省令案(医療法施行規則第1条の9)で以下の基準が挙げられています。

  1. ①患者その他の者(以下「患者等」という)の主観又は伝聞に基づく体験談の広告をしてはならないこと
  2. ②治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告をしてはならないこと

 この省令案が採用された場合、以下の内容の広告が禁止となります。これらの内容は、ホームページ等に載せている歯科医院もあるかと思いますので、特に注意が必要です。
※ ①は、「患者等の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告をしてはならないこと」となることが正式に決定しました(H30.5.14加筆)。

3-2 体験談の禁止

 上記①においては、体験談を載せることを一律に禁止しています。
 ホームページ等で患者様の体験談を載せているものも見かけますが、これは上記規則に反することになるため、削除する必要があります。
 なお、個人が運営するウェブサイトやSNSの個人ページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用を負担する等の便宜を図って掲載を依頼しているといった事情がある場合には、誘因性が認められ、広告に該当すると考えられますが、そういった誘引性が認められるような事情がない場合には、広告に該当しないとされています。
※ 患者等の体験談を一律に禁止するのではなく、「治療等の内容又は効果に関する」体験談が禁止となることになりました(H30.5.14加筆)。

3-3 ビフォーアフター写真の禁止

 上記②においては、いわゆるビフォーアフター写真を載せることを禁止しています。
 現在の省令案では、「治療等の前又は後の写真等」となっていることから、ビフォー、アフターのいずれの写真も載せてはいけないということになります。また、動画も「写真等」に含まれるとされています。
 もっとも、ビフォーアフター写真は、体験談とは異なり、「患者を誤認させるおそれ」がなければ載せてもよいということになっています。具体的には、治療前又は治療後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付し、かつ患者にとって分かりやすいように十分に配慮した場合については広告可能とされています。
 なお、以上の説明は、広告可能な事項に関するものについてであり、治療効果に関する事項等、そもそも広告可能事項でないものについては、ビフォーアフター写真等を載せて広告することができないことに注意が必要です。

4 広告可能事項と限定解除の要件

 医療法では、広告してはならない事項のみならず、広告可能な事項についても定められています(医療法第6条の5第3項)。
 もっとも、同条項は、「厚生労働省令で定める場合を除」き、同条項に掲げる事項以外の広告をしてはならないと規定しており、厚生労働省令に定める場合には例外として広告可能であるとしています。
 そして、省令案(医療法施行規則第1条の9の2)では、以下の①~④のいずれも満たした場合に広告可能であるとされています。なお、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限ります。

  1. ①医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること
  2. ②表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること
  3. ③自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
  4. ④自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること

 ①はホームページを含むウェブサイトのほか、メルマガや、患者の求めに応じて送付するパンフレットがこれに当たるとされています。なお、インターネット上のバナー広告やリスティング広告は①に該当しません。省令でウェブサイト等にこのように例外を設けた趣旨は、記載事項を広告可能事項のみに限ったことにより、医療機関のホームページ等に詳細な診療内容等を載せることができなくなり、患者様が求める情報の円滑な提供が妨げられてしまうという事態を防止することにあります。
 ②の問い合わせ先は、電話番号、メールアドレス等をいうとされています。
 ③は、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、国民や患者様に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供すること、標準的な費用が明確でない場合は、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む)までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すことが必要とされています。

5 罰則等

 広告規制に違反しているおそれがある場合、立入検査をされることがあり、さらに広告規制に違反していると認められた場合には、中止命令や是正命令がなされます(医療法第6条の8)。
 また、罰則の対象ともなります(医療法第87条1号、第89条第2号)。

6 まとめ

 上記のように、ホームページも広告規制の対象となりましたが、限定的に広告可能な事項もあるなど、難解な規定となっています。
 また、上記で説明した規制は、医療法における広告規制ですが、他の法律(ex:景品表示法、医薬品医療機器等法)にも広告に対して規制している規定がありますので、ホームページの適法性を検討する際には、そのような規制に違反していないか否かについても注意が必要です。
 医療法改正におけるホームページの広告規制の全体的なイメージとしては、概要以下のとおりとなります。
 改正内容が確定次第、先生方に情報をお伝えしていきたいと思います。

広告規制と留意点
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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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