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個別指導・監査における出頭・質問・検査の法的根拠とその範囲

 以前、歯科医が知っておくべき診療報酬請求等に関する指導・監査の手続きの記事を掲載し、手続の概要を説明しました。
 個別指導・監査は、原則として、これに先立って、実施通知により、持参すべき資料(例:診療録、契約書等)や出頭等の対象となる人物が指定されます。
 今回は、上記指定の法的根拠及びその範囲について説明いたします。

1 個別指導・監査の流れ

 個別指導・監査の流れとしては、以下のようになっています。

個別指導・監査における出頭・質問・検査の法的根拠とその範囲

 実施通知は、通常、実施の数週間前に送付されますが、実施直前になってから対象となる者や持参すべき資料等が通知されることもあります。

2 出頭・質問・検査の法的根拠

 実施通知に記載された指導・監査の対象者に対して行政側が出頭・質問・検査等を求めることのできる法的根拠は、健康保険法等に定められており、条文としては、以下のとおりです。

(保険医療機関又は保険薬局の報告等)
第78条 厚生労働大臣は、療養の給付に関して必要があると認めるときは、保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(以下この項において「開設者であった者等」という。)に対し報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示を命じ、保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む。)に対し出頭を求め、又は当該職員に関係者に対して質問させ、若しくは保険医療機関若しくは保険薬局について設備若しくは診療録、帳簿書類その他の物件を検査させることができる。
2 略

2-1 出頭・質問・検査の対象

 上記条項では、出頭を求める者と出頭、質問等を求める者の対象が異なります。そして、その対象が行政側の指示に従わなかったか否かにより、保険医療機関の登録取消事由(健康保険法第80条4号、5号)となるか否か等が異なります。これを整理すると、以下のとおりとなります。

個別指導・監査における出頭・質問・検査の法的根拠とその範囲

行政側ができること 対象 登録取消事由
報告若しくは診療録その他の帳簿書類の提出若しくは提示 保険医療機関若しくは保険薬局若しくは保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者であった者(「開設者であった者等」) 保険医療機関又は保険薬局がこれに従わない場合又は虚偽の報告をした場合には取消事由
出頭 保険医療機関若しくは保険薬局の開設者若しくは管理者、保険医、保険薬剤師その他の従業者(開設者であった者等を含む) 保険医療機関又は保険薬局の開設者又は従業者がこれに従わない場合には取消事由(保険医療機関又は保険薬局が相当の注意及び監督を尽くしたときを除く)
質問 関係者 同上
検査 保険医療機関若しくは保険薬局 同上

2-2 対象に関する注意点

 上記図から分かるとおり、個別指導・監査によって出頭を命じることのできる対象は限られていますし、登録取消事由となる対象は、保険医療機関、保険薬局、開設者、従業者となり、それ以外の関係者は含まれていません。
 実施通知には、この点が明確に記載されておらず、関係者(例:従業員でない開設者の妻、MS法人の従業員)に対して出頭を命じているような文章も見受けられますので、実施通知が届いた場合には、出頭を命じられた対象者が法的に出頭しなければならない者か否かを検討する必要があることに注意が必要です。
 仮に、出頭する必要のない関係者に対して出頭を求めている場合には、上記法的根拠を指摘して、出頭ではなく、質問に対する回答にしか対応できない旨の連絡をする等の対応を検討すべきでしょう。

3 まとめ

 個別指導・監査の実施通知の中には、法的根拠なく出頭を求めるものもありますので、行政側の文章に記載された対象が、法的に出頭・質問・検査等の対象に含まれているか否かをしっかりと検討したうえで、対応してもらえればと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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