個人情報に関してどこまで院内掲示すべき?~院内掲示すべき事項②~

 以前、歯科医院の情報をどこまで院内掲示すべき?~院内掲示すべき事項①~の記事で、歯科医院の情報に関する院内掲示について解説しましたが、院内掲示は、個人情報取得に関しても行わなければなりません。
 今回は、個人情報に関する院内掲示の留意点について説明いたします。

1 個人情報の利用目的に関する個人情報保護法の定め

 歯科医院は、患者様の個人情報を扱う事業者となりますので、個人情報保護法の適用があります。
 個人情報保護法では、個人情報の利用目的を公表している場合を除き、速やかに、その利用目的を本人に通知し、又は公表しなければならないものとされています(個人情報保護法第18条1項)。

1―1 個人情報の範囲は?

 個人情報とはどこまでの事項をいうのか気になるのではないかと思います。
 この点、個人情報とは、氏名、性別、生年月日、顔画像等個人の識別する情報に限られず、個人の身体、財産、職種、肩書等の属性に関して、事実、判断、評価を表す全ての情報であり、評価情報、交換物等によって公にされている情報や、映像、音声による情報も含まれ、暗号化等によって秘匿化されているか否かを問わないとされています。
 そうすると、歯科医院が取得する患者様に関する情報は、全て個人情報に該当することになるものと考えられます。

1―2 公表の具体例

 公表の具体的な方法として、個人情報の保護に関するガイドラインでは、以下の方法を挙げています。また、公表に当たっては、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、適切な方法によらなければならないとされています。

  1. ①自社のホームページのトップページから1回程度の操作で到達できる場所への掲載
  2. ②自社の店舗や事務所等、顧客が訪れることが想定される場所におけるポスター等の掲示、パンフレット等の備置き・配布
  3. ③(通信販売の場合)通信販売用のパンフレット・カタログ等への掲載

 歯科医院に関しては、①と②が検討すべき事項となります。そして、②が院内掲示となります。
 歯科医院の事業の性質からすると、個人情報を提供する患者様が認識できる方法により利用目的を公表することが適切な方法といえます。
 上記を合わせると、歯科医院は、患者様の個人情報の利用目的に関して、患者様の見やすい箇所に院内掲示をする必要があるといえます。

2 第三者に提供される個人情報に関する個人情報保護法の定め

 歯科医院が取得する個人情報のうち、第三者に提供される予定のある個人情報については、上記以外にも留意事項がありますので、以下で説明いたします。

2―1 第三者提供における院内掲示事項

 第三者に提供される個人情報は、あらかじめ、本人に通知し、又は本人が容易に知り得る状態に置くとともに、個人情報保護委員会に届け出なければならないものとされています(個人情報保護法第23条2項1号ないし5号)。
 そして、通知事項としては、以下のものとなります。

  1. ①第三者への提供を利用目的とすること
  2. ②第三者に提供される個人データの項目
  3. ③第三者への提供の方法
  4. ④本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を禁止すること
  5. ⑤本人の求めを受け付ける方法

2―2 第三者提供における留意点

 もっとも、「要配慮個人情報」については、この方法では第三者に提供することができず、原則として本人の同意が必要とされていることに注意が必要です。
 歯科医院で想定される要配慮個人情報とは、診療録に記載された病歴、患者の身体状況、病状、治療等について医療従事者が知り得た診療情報、健康診断の結果及び保健指導の内容、障害の事実、犯罪により害を被った事実等になります。

3 院内掲示した方が良い個人情報に関する事項

 上記は、院内掲示しなければならない事項ですが、その他に、院内掲示した方が良い事項としては、診療録等開示請求に対して手数料を徴収する旨の定めが挙げられます。
 手数料の具体的な定め方については、以前に書いた患者さんからの診療録開示請求・貸出請求への対応の記事を参照してみてください。

4 まとめ

 院内掲示しなければならない個人情報に関する事項としては、利用目的と第三者提供に関する事項となります。また、この他にも、診療録等開示請求に関する手数料の定めも院内掲示した方が良いといえます。
 院内掲示すべき事項には、様々な法令が関わっており、掲示が十分ではない歯科医院もあるように見受けられます。これを機会に、自院において院内掲示の対応をしっかりとおこなえているか、チェックしてみてもらえればと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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