医療法人設立の流れと留意点
前回、医療法人にすることのメリット・デメリットにおいて、医療法人化を検討するに際してのポイントを説明しました。
今回は、歯科医院を医療法人化することを検討されている先生方向けに、医療法人化するための設立手続について説明いたします。
目次
1 設立の流れ
医療法人の大まかな設立の流れは、以下のとおりです。
では、個々の流れについて説明します。
2-1 事前相談
医療法人は都道府県知事の認可を受けなければ設立することができません(医療法44条1項)。
そして、認可の申請はいつでもできるというわけではなく、自治体によって申請受付の日程が決められています(東京都の場合、現時点において年2回となっています)。
そのため、設立に際しては、まず、各都道府県の医療法人係の担当者や歯科医師会の担当者と、設立の時期等について事前に協議しておく必要があります。
設立説明会が開催される都道府県もありますので、それを利用することも検討されると良いと思います。
2-2 申請書類作成
事前協議等によって設立の大まかな予定を確認した段階で、医療法人設立の申請に必要な書類を作成します。
具体的には、定款や医療法人運営に必要な資金の拠出・寄付に関する契約書の作成が必要となります。定款については、厚生労働省や各都道府県がモデル定款を公表しているので、それらを参照しながら作成すると手間が省けます。
2-3 設立総会
申請書類を作成したら、設立総会を開催します。
設立総会では、定款の承認、拠出金等の承認、役員の承認等を行います。
2-4 申請
設立総会が終わった後、必要書類を揃えて都道府県の医療法人係に医療法人設立の申請を行います。
なお、本申請の前に、仮受付(仮申請)をする必要があり、仮受付の期間も定められていますので、日程管理には十分注意してください。時期を逃してしまうと、法人設立の予定が大幅に狂ってしまいます。
2-5 認可
申請後、医療審議会等で審査を行い、添付書類等に問題がなければ、認可がなされ、設立認可書が交付されます。
2-6 登記
認可後、設立登記申請書類を作成したうえ、必要書類とともに設立登記申請を行います。
この登記によって医療法人が成立します(医療法第46条1項)。
2-7 各種届出
登記後、医療機関等としての届出、税務関係の届出、社会保険関係の届出等を行います。
3 設立手続の留意点
設立をするに際しての主な留意点としては、以下が挙げられます。
3-1 規模
歯科医師は1人でも問題ありません。
もっとも、社団法人を例にしても、社員(2名以上。社員は理事や監事を兼ねることができる)や、理事(3名以上。一人医師医療法人の場合は特例適用により1名又は2名)、監事(1名以上)を設置する必要があるため、歯科医師を含めて最低4人(一人医師医療法人の特例適用の場合にも社員3人以上が望ましいとされています)は必要です。なお、医療法人の社員は法人でもなれますが、自然人の方が望ましいと指導されています。
3-2 資産
業務を行うのに必要な資産を有している必要があります。
新たに医療法人を設立する場合には、保険診療の保険料収入の入金が早くとも2か月後であることを考慮して、2か月分の運転資金は用意しておくことが望ましいとされています。
3-3 経営の透明性確保
一定規模以上の医療法人に会計基準の適用と外部監査が義務付けられます(医療法50条、50条の2、51条5項、51条の3)。
また、メディカルサービス法人との取引状況報告義務もあります(医療法51条1項)。
4 まとめ
医療法人の設立手続がうまくいかないと、医療法人への業務の移行が予定通りに進まなくなり、運営に影響が生じてしまいます。
事前にしっかりと計画を立て、スムーズに医療法人に業務を移行できるようにしましょう。
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