予約のキャンセルに対してキャンセル料請求できる?
患者様が突然予約をキャンセルした場合、先生方の治療計画は崩れてしまいます。自由診療の場合、キャンセル料を請求するという対応をしている歯科医院もあります。では、そのような対応は法的に可能なのでしょうか。
今回は、自由診療におけるキャンセル料の請求について説明いたします。
1 キャンセル料を請求することは可能
予約のキャンセルに対して、キャンセル料を徴収することについて、法律で一律に禁止する定めはありません。
そのため、治療を始めるに際し、当事者の合意により、キャンセル料を支払うことを合意した場合には、予約のキャンセルに対してキャンセル料を請求することは可能です。
2 キャンセル料の合意をする際の注意点
もっとも、キャンセル料を請求すると、患者様から、そのようなことは聞いていないなどと言われ、トラブルになることもあります。
そのような主張に適切に対応するために、以下の点に注意する必要があります。
2-1 書面による説明及び同意
まず、キャンセル料は当事者の合意によって請求が可能となりますので、自由診療を受ける際に、書面により説明し、その書面に署名してもらうことにより、同意をとるべきといえます。
書面により同意をとることにより、後にトラブルとなった際、その書面を証拠とすることができますので、歯科医院にとっても、書面による同意にはメリットがあるといえます。
また、説明し、同意をもらったことについては、カルテにも記載しておくと良いでしょう。
なお、説明と同意の取り方については、以前に書いた患者様への説明と同意②~自由診療の場合~に詳しく説明しておりますので、参照いただければと思います。
2-2 院内で掲示する
さらに、歯科医院内で、キャンセル料について掲示しておくことも重要です。
同意の書面と院内掲示により、患者様に対してキャンセル料について十分に説明、告知をしていたことを示すことができます。
2-3 キャンセル料金の定め方
キャンセル料金については、社会通念上妥当といえる範囲でしか請求することはできません。
この範囲がどの程度なのかについては色々な見解がありますが、消費者契約法第9条1号が、違約金等を定める規定につき、事業者に生ずべき平均的な損害の額を超える合意の内容は無効としていることとの関係から、キャンセル料の金額も、「その歯科医院において、通常の治療をしていた場合に得られたであろう診療報酬」を基準に算出すべきと考えます。具体的には、歯科医院の売上げから1時間あたりの売上げを算出し、当該金額を基準にキャンセル料を算出するという方法が考えられます。
また、キャンセル料について、どの時点でのキャンセルかによって金額を変えることも検討すべきといえます。例えば、一日前のキャンセルであればキャンセル料の50パーセント、当日のキャンセルであれば100パーセントというように、キャンセルの時期によって金額を変えるという方法が考えられます。
3 まとめ
このように、キャンセル料を請求する場合には、キャンセル料支払についての合意と、その料金の定め方が合理的なものである必要があります。
無断キャンセルは歯科医院にとってリスクといえますが、そのことが原因で更なるトラブルになってしまうと、診療時間以上の時間が奪われてしまいますので、事前に上記のような対策をしておくことをお薦めします。
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