駐車場トラブルにおける責任及びとるべき対策・対応

歯科医院によっては、来院する患者さま用に専用駐車場を設けています。

駐車場を設けることによって、患者さまは来院しやすくなる一方、無断駐車等のトラブルも生じてきます。

駐車場に関して生じる主なトラブルとしては、以下が挙げられます。

  1. ・患者さまでもないのに無断駐車をしている車両がある
  2. ・患者さま同士が駐車場内で事故を起こしてしまった
  3. ・近隣から駐車車両の排気ガス・騒音についてクレームを言われている

先生方としては、このようなことが生じた場合、「歯科医院に責任があるのか」、「どのように対策・対応するのが適切か」ということにつき、迷われることもあるのではないでしょうか。

そこで、今回は、駐車場で起きるトラブルにおける責任と、とるべき対策・対応について説明いたします。

1 無断駐車・違法駐車への対策・対応

専用駐車場に患者さまでもなく、歯科医院関係者でない者の車両が無断で駐車されている場合、その車両は違法駐車をしていることになります。

また、患者さまであっても、診療に必要な時間を超えて駐車している場合には、違法駐車をしていることになります。

このような場合に、とるべき対策・対応と、とってはならない対応について以下で説明します。

1-1 罰金の掲示

駐車場には、「当院の患者さま以外の駐車は固くお断りします。違法駐車を発見した場合には、金●万円をお支払いいただきます。」などの掲示がよく見受けられます。

この掲示をすることにより、無断駐車・違法駐車に対する一定の抑止力を働かせることができるため、歯科医院としては、無断駐車・違法駐車対策として、このような掲示をした方が良いと考えます。

もっとも、実際に無断駐車・違法駐車をした者に対して、掲示どおりの金額の支払を請求できるか否かという点からすると、歯科医院が被る損害は駐車場使用料ですので、一般の駐車場使用料からかけ離れた金額を法的に請求できるわけではありません。

そのため、掲示の効果は抑止力と捉えていただいた方が良いでしょう。

1-2 警察への連絡

専用駐車場への無断駐車・違法駐車に関して、警察に通報するという方法も考えられます。

もっとも、専用駐車場は私有地ですので、短期的・一回的な無断駐車・違法駐車に対しては、警察としては民事不介入ということで、積極的に動いてくれないことが多いです。

他方、無断駐車・違法駐車が繰り返されていることを写真や動画等で証明することができれば、警察も悪質性が高いとして動いてくれる場合があります。

歯科医院としては、何度も無断駐車・違法駐車が行われていることを発見した場合には、ナンバー等が見えるかたちで車両の写真を撮り、記録として保管しておくべきといえるでしょう。

1-3 勝手に車両を移動させるのはNG

先生方としては、警察も動いてくれず、罰金も支払われないのであれば、自らで行動するほかないということで、違法駐車をしている車両をレッカー移動したり、タイヤロック等を施して駐車場から出られなくするといった対応を実行したくなると思います。

しかし、これらの行為は、車両の所有権を侵害しているとして、不法行為に該当する可能性があります。

その場合、違法駐車している側から逆に損害賠償請求をされてしまう可能性がありますので、お気持ちは分かりますが、このような対応はとらないようにしてください。

2 駐車場内での事故への対策・対応

専用駐車場を利用している患者さま同士で事故が発生した場合、対応すべきか否かを含めて悩まれるのではないでしょうか。

このような場合に、とるべき対策・対応/とってはならない対応について以下で説明します。

2-1 原則として歯科医院側は責任を負わない

専用駐車場内の事故であっても、それは患者さま同士の事故であり、歯科医院の管理する範疇を超えることから、原則として、患者さま同士の事故に歯科医院が責任を負うことはありません。

そのため、原則的な対応としては、患者さま同士での話し合いを促すということになります。

2-2 例外として歯科医院側が責任を負う場合は?

例外として、以下のような場合には歯科医院側又は駐車場を管理する側が責任を負う可能性があります。

  1. ・駐車場の設備が原因となって起きた事故
  2. ・歯科の治療により患者さまの運転に支障が生じる状況を認識しながら運転をさせてしまった際に起きた事故

もっとも、このような場合にも、歯科医院側に100パーセント責任があるのかという点はよく検討しなければなりません。
そのため、このような場合に、「責任は全て歯科医院側にある」というような発言をするのは控えてください。

2-3 歯科医院がとるべき対策

上記のとおり、駐車場内で起こった事故に関して、原則として歯科医院側は責任を負いませんが、確認と注意喚起という意味で、「当院駐車場内での事故等の責任は、利用者さま自身が負い、当院は一切責任を負いません」というような掲示をすべきといえます。

なお、この掲示は確認的な意味にとどまり、上記例外に該当するような場合には、この掲示があったとしても歯科医院側に責任が生じますので、その点はご注意ください。

3 近隣からのクレームへの対策・対応

専用駐車場の近隣から、騒音や排気ガスに対して苦情を言われることがあります。
これらについては、利用者側のモラルの問題ともいえますが、駐車場を提供しているのは歯科医院なので、何らかの対策を講じる必要があります。

具体的には、前向き駐車を徹底してもらうよう掲示する、近隣の迷惑になるために駐車場内で騒がない等の掲示をしておくことが考えられます。

駐車場内にこのような掲示をすることにより、駐車場を管理する者としての義務を履行していると考えることができ、近隣からクレームがあった場合にも、注意喚起はしているという説明をすることができます。

4 まとめ

今回は、歯科医院様からご相談されることの多い、駐車場に関するトラブルについて解説しました。

責任を負う可能性のある範囲を理解したうえ、管理者としての義務を果たし、無用なトラブルを避けることができるようにしてもらえればと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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