休日出勤と法定休日の関係は?~割増賃金発生の条件~

最近の歯科医院は、土日も開院しているところが多く見受けられます。
会社が土日休みの社会人にとっては、土日も治療を行ってくれる歯科医院があると利用しやすいといえます。

他方、先生方は土日のスタッフ確保に苦慮されていると思います。
土曜日の出勤は休日出勤であるとして、割増賃金を支払っている医院もあるのではないでしょうか。

ところで、先生方は「休日出勤」と「法定休日」の関係を正しく理解されておりますでしょうか。

もしかしたら、法的には払う必要のない割増賃金を支払っている場合もあるかもしれません。

今回は、休日出勤と法定休日の関係について説明しています。

1 「休日」とは?

「休日」とは、労働者の労働義務がない日をいいます。

「休日」と似ている用語として、「休暇」があります。
最近では、有給休暇、育児休暇や介護休暇といった場面でよく耳にする用語かと思います。

「休暇」とは、本来労働義務はあるが、使用者によって労働義務を免除されている日をいいます。

このように、本来的に労働義務があるかないかという点が、「休日」と「休暇」の違いといえます。

2 法定休日とは?

労働基準法では、「休日の労働」には割増賃金が発生します(労働基準法37条)。

ここでいう「休日」は、「法定休日」をいいます。

「法定休日」とは、法律により、会社が労働者に労働をさせてはならない日(労働者の労働義務がそもそもない日)をいいます。

労働基準法では、使用者は、労働者に対し、毎週少なくとも1回の休日を与えなければならない旨規定しています(労働基準法35条1項)。
この1回の休日が「法定休日」と呼ばれます。

たとえば、会社が週に2回以上休日を与えた場合、その休日のうち、1日は法定休日ですが、もう1日は「法定外休日」となります。

上記のとおり、割増賃金が発生する「休日」は、「法定休日」であるため、「法定外休日」に労働させても、法的に割増賃金は発生しません。
この点は、勘違いされている方も多い点といえます。

土日が休みの会社において、土日の出勤に休日出勤手当を出している会社も多いですが、法的には、土日のうち、法定休日の出勤に対する手当が割増賃金であり、それ以外の法定外休日の出勤に対する手当は割増賃金ではないことになります。

なお、土日が休みの会社において、就業規則等で法定休日が記載されていない場合は、土曜日が法定休日となる厚生労働省の見解と、日曜日が法定休日と判断する裁判例の見解が分かれているといえます。

解釈に争いがある以上、就業規則等で予め法定休日を明確に定めておく等の対策が必要といえるでしょう。

3 休日出勤と法定休日の関係は?

上記を整理すると、「休日の労働」(休日出勤)は、「法定休日における出勤」となり、割増賃金の支払義務が生じる一方、「法定外休日」における出勤は割増賃金の支払義務は生じないということになります。

4 土日出勤に対する割増賃金を抑える方法はある?

土日に開院している歯科医院において、休日出勤による割増賃金を抑える方法としては、振替休日制度があります。

4-1 振替休日制度とは?

振替休日制度とは、休日に労働する代わりに、本来労働日とされている日を休日にすることをいいます。

たとえば、法定休日を日曜日としている場合、従業員を日曜日に出勤させる代わりにその週の火曜日を振替休日として、当該従業員を休ませるという方法です。

振替休日を用いてスタッフのシフトをうまく組めば、土日出勤による割増賃金を支払う必要が生じず、週40時間の法定労働時間の制限にも抵触しないという対応が可能となります。

4-2 振替休日制度を利用する際の注意点

もっとも、振替休日制度を利用するには、いくつかのルールがあります。

まず、振替休日制度を利用するためには、原則として、就業規則で振替休日制度を使う旨を予め定めておく必要があります。

振替休日制度を就業規則に定めていない状況で、休日の労働した代わりに平日に休日を与える場合、振替休日ではなく「代休」という扱いになり、割増賃金が発生することになります。

また、振替休日制度を利用して休日を振り替える場合でも、原則として、週休1日のルール(労働基準法35条1項)は守らなければなりません。

これに違反して7日以上の連勤となってしまうと、そのうちの1日は休日出勤として扱われ、割増賃金が発生してしまいますので、注意が必要です。

5 まとめ

今回は、割増賃金の発生対象となる休日出勤と法定休日の関係について解説しました。
制度を正しく理解し、法的な問題のない労務管理を行っていただければと思います。

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弁護士法人ピクト法律事務所
担当弁護士櫻井良太
歯科医院を経営する先生方は、診療のことだけでなく、医院の経営もしていかなければなりません。経営に関する問題は様々な法律が関わっており、一筋縄ではいかないものもあります。先生方の経営をお支えします。ご気軽にご相談ください。

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