【歯科医院の就業規則】作成ポイント
目次
1 就業規則を作り始める前に
1-1 対象スタッフを明確に
1-2 条件の引き下げは困難
1-3 必要な項目を記載
各項目の注意点は、続けて以下にてご説明します。
2 各項目の注意点
2-1 絶対的必要記載項目
●1日の就業時間は、【8時間以内】が原則です。
●休日は、最低週に1回または4週4回必要です。
●【1週間の法定労働時間は40時間まで】という限度も考慮して、休日を設定しましょう。
●時間外労働(残業)の扱いについても記載が必要です。歯科医院は患者対応やカルテ整理等で、どうしても勤務時間が延びてしまうことがあります。時間外労働を命じることがある、また必要に応じて休日に労働を命じることがある旨も、念のためここに記載しておきましょう。
(2) 賃金の決定、計算・支払の方法、賃金の締切り・支払の時期、昇給に関する事項
賃金に関してはトラブルになることも多いので、要注意です。
●時間外労働の割増賃金率などは、ここで明確に定めましょう。
●通常の給与に加えて通勤手当や住宅手当、試用期間中の賃金規定がある場合は、全て記載します。
●昇給については、タイミングや決定方法のほか、会社の業績や個人の能力により昇給がない場合もある旨を書いておきましょう。
(3) 退職・解雇の事由に関する事項
退職は、近年特に紛争となりやすい項目です。退職に関する事項は、網羅的に記載しておいたほうが良いですね。
●就業規則に定めが無い事由で解雇することは困難ですので、具体的に普通解雇、懲戒解雇とその事由を規定しておきましょう。
●スタッフの少ない医院では、急な退職への対応は厳しいものです。退職する際にはいつまでに、誰に報告し、どんな手続きをとるのか、を規定しておくと安心です。
また、他にも
●退職時には業務の引き継ぎを行うこと
●顧客データを持ち出さないこと等を定めた守秘義務に関する誓約書を提出すること
●支給した制服や名札等を返還すること
等の事項を定めておき、スタッフの入れ替わり時にスムーズに行えるようにしておくことが望ましいです。
2-2 相対的必要記載項目
法律上は、退職金を支給する義務はありません。ただ、退職金はスタッフが退職した後の重要な資金となりますし、スタッフが安心して働ける環境を整えるためにも、できるだけ安定的な支給が望まれます。
(2) 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
「賞与」も法律上は支給する義務がありませんが、こちらはスタッフのモチベーションを上げるために規定したい項目です。ただし、就業規則で支給を規定すると、支給義務が発生しますので、医院の経営状態、その他のやむを得ない事由がある場合は支給されないことがある旨を記載しましょう。
(3) スタッフの服務規律に関する事項
歯科医院では、患者からお菓子や、中には現金の謝礼を渡されることもあるようです。患者からの金銭・物品を一切受け取らないのか、受け取るならば誰に報告するのかなど、対応を明確にして就業規則に定めておくと安心です。
(4) カルテの取扱いに関する事項
歯科医院でカルテに記載された事項は、個人情報の中でも特に秘密性が高い情報です。個人情報の漏洩などが大きくニュースでも取り上げられる現在、歯科医院にとっても他人ごとではありません。
スタッフに対して個人情報保護の教育を行うことはもちろん、就業規則で個人情報の厳重な取扱いを定めることで、内外に医院の姿勢を示しましょう。
(5) その他
以下の事項も、人事・労務に関連したトラブルを起こさないためには重要な項目です。それぞれ医院の実態に合わせて、具体的に設定しましょう。
・安全衛生に関する事項
・職業訓練に関する事項
・災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
・表彰、制裁に関する事項
・その他全労働者に適用される事項
3 就業規則を作ったら
スタッフ全員と就業規則を共有して安定した医院運営をすすめましょう。
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